技術情報・技術コラム
コストを抑えて温度制御!アナログ式センサ活用術
アナログ式センサーはコストが安価であるという理由で、制御機器の開発現場ではよく採用されます。一方でこれらのセンサーから取ったアナログ信号はそのままでは制御できないので、インターフェース基板あるいはインターフェースボックスを用いてデジタル信号に変える(AD変換)必要があります。さらには、簡易的な計測で良いのか、シビアに制御しなければならないかによって、アナログ信号の取り扱い方に違いが出てきます。
そこで今回のコラムでは、産業機器におけるアナログ式温度センサを使いこなすための基本的なポイントをお伝えして参ります。
1.アナログ信号とは?
アナログ信号とは、時間とともに連続的に変化する信号のことです。アナログの温度センサの場合には、温度の変化に応じてセンサからの出力電圧が連続的に変化します。そのため、機器を制御するためにはこのアナログ信号をどう扱うかを決める必要があります。
2.温度センサの種類
温度センサには、以下のような種類があります。いずれも温度によって電圧や電流などのアナログ信号が変化します。
- 熱電対: 2種類の異なる金属を接合したときに発生する電圧を利用して温度を測定するもの
- 測温抵抗体: 温度変化に伴い抵抗値が変化する性質を利用して温度を測定するもの。アナログ式としては精度が高いものである。
- サーミスタ: 温度変化に伴い抵抗値が大きく変化する半導体素子を利用して温度を測定するもの。
3.アナログ信号の処理方法
出力されたアナログ信号は、アナログのまま扱うのか、デジタルに変換するのかを決める必要があります。また、信号はそのままでは読み取ることができないので、下記のような対策を行う必要があります。
- 増幅: アナログ信号をアナログで取り出したい場合は、温度センサの場合は出力電圧がmVになるので、これを増幅器で電圧出力(または電流出力)として計測することが必要となります。
- A/D変換: アナログ信号をデジタル信号に変換して、マイコンなどで処理できるようにします。
- リニアライズ: センサの出力特性が非線形の場合は、デジタル信号で取り出す場合もアナログ信号で取り出す場合も、リニアライズ回路を使って線形化する必要があります。
4.アナログ式温度センサによる、温度制御の方法
このようにして取り出したアナログ信号を使って、温度センサで機器を制御するには、大きく2つの方法があります。
- ON/OFF制御
温度制御の方式としてはシンプルなもので、例えば設定した温度まで達したら機器をONあるいはOFFにするための信号を出す、というものです。この方式の場合、シンプルな制御ゆえ機器構成もシンプルにすることができ、ラズパイでも構築することができます。したがって、コストを抑えながらシステムを構築することが可能となります。 - PID制御
PID制御は、Proportional(比例)、 Integral(積分)、 Differential(微分)の3つの動作を組み合わせた制御方式で、目標となる温度と現在の温度との差(偏差)に基づいて機器の操作量を調整(急激なのか、ゆるやかなのか、切るのかを含めて)することで、目標値に近づけるように制御します。身近な例で言うと、高機能なエアコンはこのPID制御方式を採用しています。
このPID制御は高精度な制御が可能な一方で、システム構成としてはやや煩雑になり、高価になりがちです。
5.温度制御方式はコストを鑑みた上で選定を!
アナログ式温度センサは、低コストで導入できる一方、信号処理や制御方法に工夫が必要となります。この記事では、アナログ信号の取り扱い方、温度センサの種類、そしてON/OFF制御とPID制御の特徴について解説しました。それぞれのメリット・デメリットを理解し、要件に合ったシステムを設計することで、アナログ式温度センサの利点を最大限に活かすことができます。
なお山勝電子工業ではお客様の要望に応じたシステムを回路設計・基板設計の段階からサポートすることが可能です。温度センサなどのアナログ信号を用いた機器の制御でお困りの際にはお気軽にお問合せください。